景文は、穏やかな目で私を見つめながら続けた。

「……今の俺と重なったんだ。」

「え……?」

「俺は、妾腹の子だ。一度も、陛下から“息子だ”と言われたことがない。」

その言葉は、深い悲しみを帯びていた。

「どれだけ剣の修練に励んでも、戦で功を立てても、兄たちのように名前を呼ばれることはなかった。」

「……」

「でも君も同じだった。どんなに控えめに、慎ましく振る舞っていても、陛下はそなたを見ようともしなかった。」

胸が熱くなる。まるで、凍っていた時間がゆっくりと溶けていくようだった。

「だから、助けないといけないって思った。放っておけなかった。……他人じゃない気がした。」

そう言って、景文は私の頬にそっと触れた。

「今はもう、理由なんて関係ない。俺は、君が欲しい。」

その指先が震えている。

その声が、愛しくてたまらない。

私は、景文の胸に顔を埋めた。

「……ありがとう。見ていてくれて。気づいてくれて。」