でも……私は、もう景文の女ではない。

「……昨夜、皇帝陛下のご寵愛を賜りました。」

一瞬で、景文の瞳が揺れた。

そして、その奥にある痛みを、私は見てしまった。

「何度も……何度も、求められました。もう……あなたとは――」

そう言いかけたとき、景文の腕が、私を強く抱きしめた。

そのまま、口づけが落ちてくる。切なく、激しく、哀しみに満ちた口づけ。

「……そなたは、どっちを選ぶ?」

囁くような声に、胸が締めつけられた。

「涙を流しながら皇帝に抱かれるのか。それとも……この手を取るのか。」

私は震えながら唇を噛んだ。

愛しているのは誰?

私の心は――どちらにある?

「俺と皇帝、どっちを……愛しているんだ、翠蘭。」

景文の声が、痛いほどまっすぐに胸に響いた。

私は、震える手で景文の頬に触れた。

そして、自分からそっと唇を重ねる。

「私を救ってくれたのは、あなたです。景文。」