景文が再び頭を垂れ、血の滲む床に額を押しつけた。

「だが、彼女だけは、どうかお許しを……」

その瞬間、皇帝陛下が背中を向けた。

「鞭打ちはここまでだ。来い、翠蘭。」

「えっ……⁉」

思わず声が漏れた。

怒りを含んだその声音に、場の空気が凍りつく。

「この者の命を助けたくはないのか。」

皇帝陛下は、私に背を向けたまま、低く問うた。

私は震えながら、頭を深く床につけた。

このままでは、景文が殺されてしまう。けれど……

「翠蘭……」

血に染まった景文が、倒れた体から腕を伸ばしてくる。

細い指先が、必死に私へと伸びる。

でも、その手を取ってしまえば、彼は――

「うっ……うぅ……」

私は、涙をこらえながら、首を横に振った。

「ごめんなさい……」

景文の瞳が揺れる。

その手が、力なく、床に落ちた。