「……俺も、あなたの息子だからですよ。」

「……なに……?」

景文の笑みが深まる。

「28年前。あなたは、一人の侍女に手を付けた。忘れましたか? 名は“阿蘭”。」

皇帝の目が見開かれる。

「その年、阿蘭は懐妊し、宮を追われた。けれど、生まれた子には“皇族の証”だけが与えられた。なぜなら――“いつか必要になる時が来るかもしれぬ”と、あなたが言ったからだ。」

「……っ!」

「俺は、母と共に辺境で育ち、やがて文を学び、剣を学び……そして“影の皇子”として生きてきた。」

「そんなこと……そんなことが……!」

「信じられないのなら、調べればいい。俺の血を取って、正室の三男と比べてみればいい。きっと、驚くほど一致するだろう。」

皇帝は、言葉を失っていた。

「なぜ、それを今さら明かした?」

「それがあなたの“妃”を愛したからだ。初めて、自分のために生きたくなった。……それが罪だというのなら、喜んで命を差し出します。」