荒く息をつく景文は、私の隣にそっと横たわった。

汗ばんだ額にかかる髪をかき上げながら、彼は呟いた。

「……ごめん。優しく、できなかった。」

「いいの……」

私は、そっとその胸に顔をうずめた。

景文の胸は温かくて、鼓動が耳に心地よかった。

その音に包まれて、私は安心して目を閉じる。

これまでの夜とはまるで違う、

愛に包まれた、ふたりの夜――

やがて朝が来る。

それは、ただの“逃げた妃”と“文官”ではなく、ふたりの新しい未来のはじまりだった。