景文の腕が、私の腰にそっと回された。

「恋人だったら、いいか?」

「うっ……!」

その一言に、胸が跳ねた。

そんなこと、私の口から言えるわけないじゃない。

でも、景文の瞳は冗談ではなかった。

ただ、私だけを見ている真剣なまなざしだった。

「翠蘭……おいで。」

低く甘い声が、名前を呼ぶ。

拒めなかった。

私はその腕に身を委ね、景文に抱きかかえられるようにして、寝台の上にそっと横たえられた。

柔らかく沈む布団の上。

天井を見上げながら、心臓の音だけがやけに大きく響いていた。

彼が隣にいる。

景文が私を**“女”として抱こうとしている**。

今夜――

私は逃げずに、この気持ちを、受け止めようと思った。

「……景文。」

小さく名前を呼ぶと、景文はその声に応えるように、私の方を見て微笑んだ。

「翠蘭が――恋しい。」