「うん。あれこれ探しはしたみたいだけど、後宮の中にはいなかったし、宮殿の外にまで手を伸ばす前に、報告が上がってこなくなった」

「そ、そんな……」

私がいなくなっても、**あっけなく“消えた妃”**として処理されてしまったというの?

景文は少しだけ真顔になって言った。

「――後宮は、失われた妃を追う場所じゃない。新たに迎える場所だからな。」

冷たい現実だった。

けれど、それが今の私の居場所を、より確かにしてくれた気がした。

湯船から上がったあと、私はふと――困った。

「……寝る場所が、ない。」

寝殿も後宮もない。

ここには、私専用の部屋があるわけでもない。

思い返せば、この屋敷に来てから眠ったのは、あの一夜限りの、景文の寝所だけだった。

でも――

私たちは夫婦でも、恋人でもない。

そんな私が、また彼の寝所に入るなんて……。