朝の光が障子越しに差し込む中、案内された食事処には、すでに景文がいた。

白い湯気を立てる朝粥の膳が、二人分。

「……あなたと、一緒に食べるの?」

問いかける私に、景文は箸を手にしたまま頷いた。

「ああ。」

簡潔な返事だったが、その声にはどこか穏やかな温度があった。

私たちは向かい合って、ふたりきりで静かに朝粥を口に運んだ。

温かいはずの粥が、どうしてこんなに喉につかえるのだろう。

「……あの。」

私は箸を置き、言葉を探す。

「皇帝の妃がいなくなったら、どうなるのかしら。」

景文は一瞬だけ箸を止めた。

「……ああ、探すだろうな。皇帝の寝所に現れなかった妃が、翌朝姿を消していたら――さすがに、ね。」

やっぱり。

でも、きっと私がここにいるとは思わない。

後宮の誰も、文部大臣の屋敷に妃が身を寄せているなんて想像しないはず。