お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました

それは、お世辞にもなぐさめにもならなかった。

湯から上がり、肌を整え、髪を梳かれる。

そして私は、自分の部屋に戻ると、そっと引き出しを開けた。

そこにあったのは――

妃になった日に、皇帝から授けられた一本の簪(かんざし)。

金細工に、淡い青玉があしらわれた繊細な意匠。
私はそれを、静かに髪に挿した。

たった一晩のために。

けれど、それでも。

私は――

“皇帝の妃”として、今夜を生きるのだと、そう決めた。

その時だった。

衣を整え、薄紅を差し、鏡に向き合っていた私の目に――

窓辺に立つひとつの影が映った。

「……おや。」

涼しげな声が風とともに届く。

「今宵は、たいそうおめかししてますね。」

「――周景文!」

私は思わず立ち上がり、周囲を見渡した。

戸も開けていないのに、彼はいつの間にかそこにいた。

「どこから入ったのですか……!」

「どうしたのですか?」