今でも時々、終電を逃して帰れない夢を見る。
コレは、不安などから来る妄想ではなく、実際に帰れなくなった時のこと。
台風が接近していた。その頃、派遣会社から大型汎用機のオペレーターを交代制勤務で通勤していた。
派遣先は、今はないY商事。新大阪駅から少し離れた場所だった。
派遣先管理者の主任も暢気だった。帰れなくなるとは思っていなかったのだ。
尿道結石で緊急入院した時も、軽く見ていた位だから。
なかなか帰してくれなくて、地下鉄を乗り継いで阪和線天王寺駅に向かったら、電車が止まっている、と言う。まだ終電ではない。
そして、振替輸送で南海電車に乗ることも出来ない、と駅員は言う。
市内のホテルは無理だと、駅員は冷たく言った。
この駅員が、夢の中に「出演」して来るのである。
散々、迷った挙げ句、中百舌鳥の市営住宅に住む妹のことを思い出し、電話した。
幸い、一晩泊めると約束してくれた。
地下鉄で中百舌鳥まで行き、タクシーに乗った。
最初は、乗車拒否ばかりだった。
三台目で捕まり、住宅の案内板付近まで行って貰った。
おにぎりと、温いお風呂をご馳走になった。
明くる日、仕事場を休んだ。体調を崩さない訳がなかったのだ。
電車の車内で一夜を過ごした人もいた。
早く帰れれば、休むことも無かった。
主任以外の人間が出て、不機嫌な対応をした。
元からパワハラを受けていたから平気だった。
「独身?その歳で?男が好きなのか?イン〇〇ンツなのか?」
無理矢理連れて行かれる、昼休みの食堂で、その男は言う。
仕事場でも、嫌味ばかり言う。
左遷されたのだ、その現場は「子会社」だった。
男は、隣の部署の部長だった。
私は、「任期延長」を断った。
このままでは胃腸までやられそうだった。
任期満了の日。本来の部署の部長が昼飯を奢ってくれ、謝ってくれた。
この人も左遷組なんだろうが、優しかった。
まだ、プログラマの修行時代だった。
あの男を嫌っていない人間なんかいなかった。
彼が公休日の時、「平和」だった。
誰に聞かなくても、休みと分かった。
男は、キーボードアレルギーだった。
私の派遣された部署も、男の部署も、オペレーションが主だが、出来上がったシステムを元にちょっとしたプログラム改造をしていた。
彼には出来ないことだった。
私や、交替勤務の相棒の仕事は、主にプロントアウトされた帳票の整理・管理だった。
男は、それすら出来なかった。
男は、離婚していた。左遷に離婚。すさんだ生活しかなかったのだろう。
ひとづてに聞いたが、パワハラが元で離婚したらしい。
さもありなん。
東栄特撮の悪役が似合いそうな面構えだった。
もう、死んだかな?まあ、関係ないや。
とにかく、あの夜は「死にもの狂い」だった。
そして、夢に出て来る。
終電にに乗る為に切符を買おうとするが、売ってくれない。
電車は出て行く、悔いは残る。
そして、目が覚める。
もう電車は乗れない。乗れる体では無くなった。
皮肉だが、「乗り遅れ」はない。
―完―
コレは、不安などから来る妄想ではなく、実際に帰れなくなった時のこと。
台風が接近していた。その頃、派遣会社から大型汎用機のオペレーターを交代制勤務で通勤していた。
派遣先は、今はないY商事。新大阪駅から少し離れた場所だった。
派遣先管理者の主任も暢気だった。帰れなくなるとは思っていなかったのだ。
尿道結石で緊急入院した時も、軽く見ていた位だから。
なかなか帰してくれなくて、地下鉄を乗り継いで阪和線天王寺駅に向かったら、電車が止まっている、と言う。まだ終電ではない。
そして、振替輸送で南海電車に乗ることも出来ない、と駅員は言う。
市内のホテルは無理だと、駅員は冷たく言った。
この駅員が、夢の中に「出演」して来るのである。
散々、迷った挙げ句、中百舌鳥の市営住宅に住む妹のことを思い出し、電話した。
幸い、一晩泊めると約束してくれた。
地下鉄で中百舌鳥まで行き、タクシーに乗った。
最初は、乗車拒否ばかりだった。
三台目で捕まり、住宅の案内板付近まで行って貰った。
おにぎりと、温いお風呂をご馳走になった。
明くる日、仕事場を休んだ。体調を崩さない訳がなかったのだ。
電車の車内で一夜を過ごした人もいた。
早く帰れれば、休むことも無かった。
主任以外の人間が出て、不機嫌な対応をした。
元からパワハラを受けていたから平気だった。
「独身?その歳で?男が好きなのか?イン〇〇ンツなのか?」
無理矢理連れて行かれる、昼休みの食堂で、その男は言う。
仕事場でも、嫌味ばかり言う。
左遷されたのだ、その現場は「子会社」だった。
男は、隣の部署の部長だった。
私は、「任期延長」を断った。
このままでは胃腸までやられそうだった。
任期満了の日。本来の部署の部長が昼飯を奢ってくれ、謝ってくれた。
この人も左遷組なんだろうが、優しかった。
まだ、プログラマの修行時代だった。
あの男を嫌っていない人間なんかいなかった。
彼が公休日の時、「平和」だった。
誰に聞かなくても、休みと分かった。
男は、キーボードアレルギーだった。
私の派遣された部署も、男の部署も、オペレーションが主だが、出来上がったシステムを元にちょっとしたプログラム改造をしていた。
彼には出来ないことだった。
私や、交替勤務の相棒の仕事は、主にプロントアウトされた帳票の整理・管理だった。
男は、それすら出来なかった。
男は、離婚していた。左遷に離婚。すさんだ生活しかなかったのだろう。
ひとづてに聞いたが、パワハラが元で離婚したらしい。
さもありなん。
東栄特撮の悪役が似合いそうな面構えだった。
もう、死んだかな?まあ、関係ないや。
とにかく、あの夜は「死にもの狂い」だった。
そして、夢に出て来る。
終電にに乗る為に切符を買おうとするが、売ってくれない。
電車は出て行く、悔いは残る。
そして、目が覚める。
もう電車は乗れない。乗れる体では無くなった。
皮肉だが、「乗り遅れ」はない。
―完―


