夜風が冷たく肌を刺した。藍都学園都市の街灯が遠ざかるにつれて、光はまばらになり、道は荒れ果てた舗装へと変わっていく。
三枝美佳は上着の裾を握りしめ、歩みを進めていた。隣には朝倉純、その後ろを宮下ユリと有栖川玲が続く。
四人は言葉少なに歩いていた。緊張が空気を圧している。
やがて、遠くに巨大な影が見え始めた。鉄骨がむき出しになった無骨な建物。その壁面には崩れかけたロゴがかろうじて残っている。
《LAPIS: Logical Algorithmic Parallel Integration System》
美佳の心臓が強く跳ねた。
──これだ。記憶の断片で見た、あの場所。
「間違いないな」
純が低く言う。
「ここが、“始まり”の場所だ」
近づくほどに、工場の廃墟は不気味さを増していった。窓は砕け、錆びついたフェンスは倒れ、雑草が伸び放題に蔓延っている。だが、その荒廃の中に、異様な“気配”が漂っていた。
「……ねぇ、聞こえる?」
ユリが囁く。
美佳も耳を澄ませる。風の音に混じり、低く機械が軋むような音が確かに聞こえた。
「電源なんて切れてるはずなのに……」
玲が険しい顔をする。
「誰かが、今もここを使ってるってことか」
工場の正面扉は錆びついて固く閉ざされていた。純が肩で押してみるが、びくともしない。
そのとき、美佳はポケットの中の“鍵”を握った。七海彩音から渡された、小さな銀色のペンダント。
不思議と手のひらに熱を帯び、廃工場の扉に近づくほどに微かに光を放つ。
「……美佳、それを」
純が気づき、息をのむ。
美佳はおそるおそるペンダントを扉の錆びついた錠前に近づけた。すると、カチリ、と乾いた音を立ててロックが外れる。
重々しい扉が、軋みながらゆっくりと開いていく。
冷気と共に、暗い闇の奥から、かすかな電子音が流れ出した。
美佳は息を詰め、仲間たちと視線を交わした。
「行こう……。真実が、ここにある」
四人は足を踏み入れる。
長い年月を経て朽ちた廃墟の奥に、かつて世界を揺るがした“計画”の残滓が眠っているとも知らずに──。
三枝美佳は上着の裾を握りしめ、歩みを進めていた。隣には朝倉純、その後ろを宮下ユリと有栖川玲が続く。
四人は言葉少なに歩いていた。緊張が空気を圧している。
やがて、遠くに巨大な影が見え始めた。鉄骨がむき出しになった無骨な建物。その壁面には崩れかけたロゴがかろうじて残っている。
《LAPIS: Logical Algorithmic Parallel Integration System》
美佳の心臓が強く跳ねた。
──これだ。記憶の断片で見た、あの場所。
「間違いないな」
純が低く言う。
「ここが、“始まり”の場所だ」
近づくほどに、工場の廃墟は不気味さを増していった。窓は砕け、錆びついたフェンスは倒れ、雑草が伸び放題に蔓延っている。だが、その荒廃の中に、異様な“気配”が漂っていた。
「……ねぇ、聞こえる?」
ユリが囁く。
美佳も耳を澄ませる。風の音に混じり、低く機械が軋むような音が確かに聞こえた。
「電源なんて切れてるはずなのに……」
玲が険しい顔をする。
「誰かが、今もここを使ってるってことか」
工場の正面扉は錆びついて固く閉ざされていた。純が肩で押してみるが、びくともしない。
そのとき、美佳はポケットの中の“鍵”を握った。七海彩音から渡された、小さな銀色のペンダント。
不思議と手のひらに熱を帯び、廃工場の扉に近づくほどに微かに光を放つ。
「……美佳、それを」
純が気づき、息をのむ。
美佳はおそるおそるペンダントを扉の錆びついた錠前に近づけた。すると、カチリ、と乾いた音を立ててロックが外れる。
重々しい扉が、軋みながらゆっくりと開いていく。
冷気と共に、暗い闇の奥から、かすかな電子音が流れ出した。
美佳は息を詰め、仲間たちと視線を交わした。
「行こう……。真実が、ここにある」
四人は足を踏み入れる。
長い年月を経て朽ちた廃墟の奥に、かつて世界を揺るがした“計画”の残滓が眠っているとも知らずに──。



