冷たい蛍光灯の光が、地下通路のコンクリート壁を白く照らしていた。
その光の中に、LAPISの隊員たちが整然と並び、無機質な瞳で三人を見据えている。
白い制服の胸元には、青い石を象った徽章──零域の管理者だけが持つ印章が輝いていた。
「……何人いる?」
純が低く呟く。
彩音が即座に答える。
「最低でも六。背後にも二人、距離を詰めてる」
指揮官と思しき女性が一歩前に出た。
「三枝美佳、あなたは無許可で零域へのアクセスを試みました。これ以上の行動は、規定により制止します」
その声は冷たく、感情を削ぎ落した機械のようだった。
美佳の喉がひくりと動く。
「どうして……私を知ってるの?」
「あなたの存在は、零域システムの中枢に刻まれている。生まれた瞬間から」
その一言に、美佳は息を呑んだ。
何を意味しているのか、理解が追いつかない。けれど背筋を這い上がる寒気だけは、はっきりと感じ取っていた。
純が美佳の前に立ち、短剣を抜く。
「悪いが、こっちは後には引けない」
彩音もポケットから小型のEMP発生器を取り出し、指をかける。
「三秒間だけ、視界と通信を潰す。あとは……走って」
「彩音、でも──」
「美佳、今しかない!」
次の瞬間、耳をつんざく高周波音と共に、通路全体が暗闇に沈んだ。
蛍光灯が瞬き、LAPIS隊員たちの動きが一瞬止まる。
純はその隙を逃さず、二人の隊員の間をすり抜け、美佳の腕を強く引いた。
階段を駆け上がるように、防爆扉の前へ。
美佳は再び端末をかざし、心の中で強く念じた。
──開いて。私を、通して。
低い振動音とともに、扉の錠が解ける音が響く。
重い扉が左右にゆっくりと開いていく。しかしその背後から、暗闇を裂く怒号が飛んだ。
「阻止しろ! 認証を止めろ!」
純が振り向きざまに短剣を構え、迫る影を牽制する。
彩音は美佳の背を押し、低く囁いた。
「行って。あなたが進まないと、この扉は閉じる」
美佳は一瞬、二人の顔を見た。
その表情に迷いはなかった。自分を送り出す覚悟と、背負う覚悟だけがそこにあった。
深く息を吸い、美佳は防爆扉の向こう──零域の闇へと足を踏み入れた。
背後で扉が閉まりかけると同時に、金属がぶつかる音と短い叫び声が響いた。
──彼らは、大丈夫なのか?
不安が胸を締めつけるが、美佳は立ち止まらなかった。
今、引き返すことは許されない。
扉が完全に閉まった瞬間、零域の内部は外界と隔絶された。
そして、目の前に広がった光景は、美佳が想像していた「地下施設」とはまるで違っていた。
その光の中に、LAPISの隊員たちが整然と並び、無機質な瞳で三人を見据えている。
白い制服の胸元には、青い石を象った徽章──零域の管理者だけが持つ印章が輝いていた。
「……何人いる?」
純が低く呟く。
彩音が即座に答える。
「最低でも六。背後にも二人、距離を詰めてる」
指揮官と思しき女性が一歩前に出た。
「三枝美佳、あなたは無許可で零域へのアクセスを試みました。これ以上の行動は、規定により制止します」
その声は冷たく、感情を削ぎ落した機械のようだった。
美佳の喉がひくりと動く。
「どうして……私を知ってるの?」
「あなたの存在は、零域システムの中枢に刻まれている。生まれた瞬間から」
その一言に、美佳は息を呑んだ。
何を意味しているのか、理解が追いつかない。けれど背筋を這い上がる寒気だけは、はっきりと感じ取っていた。
純が美佳の前に立ち、短剣を抜く。
「悪いが、こっちは後には引けない」
彩音もポケットから小型のEMP発生器を取り出し、指をかける。
「三秒間だけ、視界と通信を潰す。あとは……走って」
「彩音、でも──」
「美佳、今しかない!」
次の瞬間、耳をつんざく高周波音と共に、通路全体が暗闇に沈んだ。
蛍光灯が瞬き、LAPIS隊員たちの動きが一瞬止まる。
純はその隙を逃さず、二人の隊員の間をすり抜け、美佳の腕を強く引いた。
階段を駆け上がるように、防爆扉の前へ。
美佳は再び端末をかざし、心の中で強く念じた。
──開いて。私を、通して。
低い振動音とともに、扉の錠が解ける音が響く。
重い扉が左右にゆっくりと開いていく。しかしその背後から、暗闇を裂く怒号が飛んだ。
「阻止しろ! 認証を止めろ!」
純が振り向きざまに短剣を構え、迫る影を牽制する。
彩音は美佳の背を押し、低く囁いた。
「行って。あなたが進まないと、この扉は閉じる」
美佳は一瞬、二人の顔を見た。
その表情に迷いはなかった。自分を送り出す覚悟と、背負う覚悟だけがそこにあった。
深く息を吸い、美佳は防爆扉の向こう──零域の闇へと足を踏み入れた。
背後で扉が閉まりかけると同時に、金属がぶつかる音と短い叫び声が響いた。
──彼らは、大丈夫なのか?
不安が胸を締めつけるが、美佳は立ち止まらなかった。
今、引き返すことは許されない。
扉が完全に閉まった瞬間、零域の内部は外界と隔絶された。
そして、目の前に広がった光景は、美佳が想像していた「地下施設」とはまるで違っていた。



