鍵を受け取った瞬間、美佳の胸の奥で何かがカチリと音を立てた。重なり合わなかった記憶のピースが、ようやく嵌まったような感覚。けれど、その完成形はまだ見えない。
「……この鍵、本当に私が受け取っていいのかな」
美佳は無意識にそうつぶやいた。心のどこかで、まだ信じきれない自分がいる。彩音がこの鍵を託した理由、それが自分への信頼によるものだと受け止めきれないでいた。
隣に立つ純が、静かにうなずいた。
「お前しかいなかったんだと思うよ、彩音にとって。……それが、真実だ」
その言葉が胸に刺さる。美佳は唇を噛みしめた。
彩音の声が、今も耳に残っている。
《美佳、もしもの時は、お願いね。誰にも言わないって、約束してくれる?》
あの夜の言葉の重みが、今になってようやくわかる。彩音は“すべて”を背負って、逃げたのではない。誰かに託すために、最後の力を振り絞ったのだ。
「ねぇ、純……これ、開けてみよう」
美佳は鍵を見つめながら言った。手の中のそれは小さくても、重たかった。ずっしりと、彩音の記憶と覚悟が詰まっているようだった。
二人は人目のない時間を選び、静かに旧LAPISビルの地下倉庫へ向かった。そこは現在閉鎖されている区域で、照明も最低限。廊下の先にある重たい鉄の扉、その脇に設置された小さな錠前。
「いくよ」
美佳は深呼吸し、鍵を差し込んだ。
カチリ、と小さな音がして錠前が開く。その音が、あまりにも軽やかで、不意に涙がこぼれそうになる。
扉の向こうには、埃をかぶったキャビネットと、簡素な机、そして一台のノートパソコンがあった。
「これって……」
純がつぶやく。美佳は手を伸ばし、ノートパソコンをそっと開いた。画面はうっすらとホコリを被っていたが、通電はしているようだった。パスワード画面が表示されている。
「心当たり、ある?」
純の声に、美佳は頷いた。
彩音の誕生日、好きな数字、かつて二人で共有したコードネーム……いくつかの組み合わせを試した末──。
ピッ。
ログインに成功した。
画面に現れたのは、見覚えのあるロゴ。「LAPIS confidential archive」の文字が静かに点滅していた。
その下に、ひとつのファイルが表示されている。
『Project MIRAGE –最終ログ』
美佳は息を飲む。
ここに、彩音が残したすべてが──ある。
「……この鍵、本当に私が受け取っていいのかな」
美佳は無意識にそうつぶやいた。心のどこかで、まだ信じきれない自分がいる。彩音がこの鍵を託した理由、それが自分への信頼によるものだと受け止めきれないでいた。
隣に立つ純が、静かにうなずいた。
「お前しかいなかったんだと思うよ、彩音にとって。……それが、真実だ」
その言葉が胸に刺さる。美佳は唇を噛みしめた。
彩音の声が、今も耳に残っている。
《美佳、もしもの時は、お願いね。誰にも言わないって、約束してくれる?》
あの夜の言葉の重みが、今になってようやくわかる。彩音は“すべて”を背負って、逃げたのではない。誰かに託すために、最後の力を振り絞ったのだ。
「ねぇ、純……これ、開けてみよう」
美佳は鍵を見つめながら言った。手の中のそれは小さくても、重たかった。ずっしりと、彩音の記憶と覚悟が詰まっているようだった。
二人は人目のない時間を選び、静かに旧LAPISビルの地下倉庫へ向かった。そこは現在閉鎖されている区域で、照明も最低限。廊下の先にある重たい鉄の扉、その脇に設置された小さな錠前。
「いくよ」
美佳は深呼吸し、鍵を差し込んだ。
カチリ、と小さな音がして錠前が開く。その音が、あまりにも軽やかで、不意に涙がこぼれそうになる。
扉の向こうには、埃をかぶったキャビネットと、簡素な机、そして一台のノートパソコンがあった。
「これって……」
純がつぶやく。美佳は手を伸ばし、ノートパソコンをそっと開いた。画面はうっすらとホコリを被っていたが、通電はしているようだった。パスワード画面が表示されている。
「心当たり、ある?」
純の声に、美佳は頷いた。
彩音の誕生日、好きな数字、かつて二人で共有したコードネーム……いくつかの組み合わせを試した末──。
ピッ。
ログインに成功した。
画面に現れたのは、見覚えのあるロゴ。「LAPIS confidential archive」の文字が静かに点滅していた。
その下に、ひとつのファイルが表示されている。
『Project MIRAGE –最終ログ』
美佳は息を飲む。
ここに、彩音が残したすべてが──ある。



