「やっぱり、お前か。いつか来るとは思っていた」

 魔法神殿で、知っている奴がいた。

「やっぱり、人間の騎士なのか。つまらん」

「ゴブリンになって面白がっているのはお前くらいだろうよ。で、やっぱり魔法が欲しいと?」

「そういうことだ。ゴブリン種族では魔法能力が乏しいから、ここいらでテコ入れしないと」

 俺は、このところに猛獣やモンスターとの見世物試合で得た賞金と儲けの七割くらいを差し出す。食費込みの協力報酬でアルチェに(出場報酬の)いくらか以上は渡しているから、盗賊狩りの分を別にすれば六回の試合のほぼ全額だ。
 なにしろ自分で自分に賭けて穴馬ゲームしたことでも、総じて考えれば悪くない利益だった。

「これで、魔法の印を売ってくれ」

「何が欲しい?」

「回復魔法、緊急時に自動発動するやつも。それからシンプルな衝撃波と、火種を出せるやつ。火の魔法は生活の道具だから威力はあんまり必要ない」

 僧侶騎士の友人は小首を傾げた。

「じゃあ、これの半分くらいの金額で足りる」

「もう二三、欲しいのがある。そっちはミッション報酬でしか手に入らないレアだから、これはそのための前金だな」

「ふうむ。貴様、また何か企んでるな?」

「モチのロンだ。こうなったら、楽しむさ」

 この世界は、自分たちがいた世界とは「裏表」や位相の異なった世界だ。いずれ、往来する方法も考えなくてはなるまい。