まだ空が暗く、夜と朝の境目も曖昧な頃だった。
 灯台の下、波の音だけが聞こえる海辺に、一人の男が座っていた。

 名は、宇佐美(うさみ)(あおい)。風に揺らし、ひとり黙って、光るおもちゃをいくつも海へと流していた。何度も、何度も。

 誰にも届かないかもしれないと、知っていても。

 それでも彼は、静かに呟く。

 「……誰か、拾ってくれへんかな。俺の想い。」