無事にお祭りも大成功に終わり、社内の空気はお祭りの余韻から行楽シーズンどこに行く?という話題にすっかり切り替わっていた。


昼休みの食堂



人混みの中で神宮先輩を見つける。



「あ、先輩!お疲れ様です!」



「お疲れ様。なぁ、結月今日の夜空いてる?」




先輩が振り返り、話しかけて来る。




「はい、空いてますけど…どうしたんですか?」




「ちょっと話があって…ふたりでご飯でもどうかなって思って」




「大丈夫です!どこ行きます?焼肉?」




「良いね!焼肉行こう!」



「はい!」



どうしたんだろうと気になって仕方がないまま、定時を迎え、仕事が終わり、先に退勤した俺は先輩が出て来るのを玄関で待って居た。




「結月!ごめん、お待たせ」



「いえ!全然待ってないです!」



「じゃ、行こうか」



「はい!」



先輩の車の助手席に乗せて貰い、焼肉屋へ向かう。



「結月、空調寒くないか?」



「大丈夫です」



先輩の華麗な運転に丁度いい振動で段々と眠くなって来る。



うとうとしているのがバレたのか先輩はクスッと微笑みながら「寝てて良いよ、着いたら起こすから」と言ってくれたので、お言葉に甘えて寝ることにした。



ふと、意識が戻り、微睡んで居ると先輩が後ろを向きバッグ駐車をしている所だった。



「あ、起きたか?」



「…おはようございます…せんぱぁい…」



「おはよう、着いたぞ」



暫くボーッとして、意識を覚醒させる。



先輩はその間も僕を見ながら微笑んでいた。



目も醒めた僕達は、店内に入り注文をする。



「それで先輩、話ってなんですか?」



「…あのさ」



「…はい」



なんだろうかと身構える。



「…俺、今日兄貴が帰って来るから帰る所ないんだよな…結月の家に泊めてくれないか?」



泊める…?先輩を…?




でも、先輩のこともっと知りたい、仲良くなりたい。



「…まぁ、泊めるぐらいなら大丈夫ですよ」



「ありがとう!」




神宮先輩が僕の家に入り、キョロキョロと辺りを見渡す。



「お、お邪魔します」



先輩が僕の家に居るなんだか新鮮…



「結月、早く入って。前に言ってたゲームしようぜ」



「あ、はい!」



数時間後



「うあーっ!また負けたああぁぁ!」



「先輩、意外とゲーム不慣れなんですね」



何度も負け続け悔しがる神宮先輩がなんだか微笑ましく思えて来る。



「もう1回だけ!もう1回だけ!」



「わかりました。あと1回だけですよ」



そして沢山ゲームをした結果僕が勝ち神宮先輩が負け、お風呂を沸かす羽目になった。



「でも、意外でした。先輩ご兄弟がいらしたんですね」



「そう?といっても、最近はそんなに会ってないんだけどね」



「仲悪いんですか?…あっ、言いたくないとかなら言わなくて良いんですけど!」



「いや、普通に仲良いよ?会えてないだけでたまに通話はしてるから」



「そうなんですね!僕にも弟が居るんです」



「うん、そうなんだ!どんな人なの?」



「頼もしくて、優しい…とっても穏やかな人です」




「そっか、尊敬してるんだな」




「はい!僕にとって自慢の弟です」




こうして楽しく過ごして、そろそろ寝ようかという頃



先輩が話しかけて来た。



「なあ、結月…行楽シーズンどこか行くのか?」



「いえ、どこも混んでますし、今年も家で過ごそうかなと思ってます…どうかしたんですか?」



「…一緒に遊びに行きたい…ダメ?」



「良いですよ、どこに遊びに行きます?」



こうして、お互い眠るまで語った。



とても楽しい、こんなに楽しかった事は人生でそんなに無かった。



翌朝



「…ん」



目覚まし時計に起こされて、目を開ける。



「おはよう」



「おはようございます…!?」



目を開けると床で寝ていたはずの先輩がベッドに腰掛け、顔を近付けていた。



「…って!なんでこんなに顔が近いんですか!?」



「…朝ごはん出来たから起こしてたんだ」



「ってか、朝ごはん作ってくれたんですか!?うわー、ありがとうございます!」



そう言いながら飛び起きた僕を見て先輩はちょっとだけびっくりしたようで、少し瞳孔が大きくなった気がした。



「そんなに朝ごはん作るの憂鬱だったの?」



だが、すぐに普通の顔に戻り微笑みながら訊ねる。



「憂鬱ですよ!勝手にご飯が毎日作られてるのがどんなに幸せか」



「…じゃあ、これから毎日朝ごはん作って来るから会社で食べよう」



「良いんですか!?やったー!」



「うん。だから……俺と付き合ってくれませんか?」



「…え?」



「俺…結月のことが好きなんだ。愛してるんだ」



ん?好き?愛してる?告白された?



「…あの、今なんと…」



「結月のことが、好きだから付き合って欲しい」



「…!はい!喜んでっ!」