歓迎会の時に言われた"新しいこと"が遂に舞い込んで来た。
課長に呼び出された僕は夏祭りの仕事を任された。
課長の期待には応えたい。
だが、本当に僕で良いんだろうか?
新人は他にも沢山居るのにどうして課長は僕に指名したんだろうか?と自信を失くし、モヤモヤしていた。
昼休憩中の食堂で
「結月、おーい!結月!」
「はっ!?じ、神宮先輩!?どっ、どうしてここに?」
「昼休憩中なんだからみんな食堂に来るだろ。お前こそどうした?最近、元気ないけど」
「…実は、課長から『地元で行なう夏祭りの衣装製作と催し物』の企画をして欲しいって言われてしまって…本当に僕なんかで良いんでしょうか…他にも適任が居るんじゃって思うと…」
「なるほどな、それで病んで元気なかったのか」
「はい…」
「言っとくが、課長はそんなに深く考えてないと思うぞ?"楽しかったらそれで良い"ぐらいに思っておけ。先輩からのアドバイスだ」
「先輩…」
「そんなに不安なら俺も手伝うし、いつでも頼ってくれ」
「はい!先輩、ありがとうございます!」
こうして僕と神宮先輩の共同プロジェクトがスタートした。
「先輩!衣装のデザイン案持って来ました」
「おっ!法被かー」
「お祭りといえば法被かな、と」
「ま、そうなるよなー…盆踊り踊るって言われたらなー…」
「…ですよね」
「…でも、悪くはないと思うぞ?普通に羽織るだけだから、着脱もしやすいし」
「ありがとうございます!その案で課長に提出してみます」
「うん、いってらっしゃい」
手をひらひらと振って見送ってくれる先輩に見守られながら、課長に衣装のデザイン案を見てもらう。
暫く黙考した後、課長は口角を上げ、言った。
「よし!これで行こう!」
「…!はいっ!」
こうしてデザイン案が決まり、いよいよ本格的な準備段階へと進んでいった。
「柳さん、どう?キツい?」
「ぴったりです!」
わいわいと賑やかな雰囲気で夏祭りの準備が進む中、僕と先輩は資料室に篭って催物の製作へと進んでいた。
「今年はヨーヨー釣りなんだね」
「先輩、ここの出身なんですか?」
「うんん、小学生の時に一瞬だけ住んでたんだ」
「へー!だから、この夏祭りにも参加したことあったりするんですか?」
「あぁ、社会人になってからは初めてなんだけど。結月は地元の祭り参加してた?」
「してなかったですね、親が厳しくてずっと勉強してました」
「…そっか、じゃ!初めての祭りだな。…嫌じゃ、なかったら一緒に周って、俺が祭りのイロハを教えてやるよ」
「はい!ありがとうございます!」
こうして一緒に祭りに参加することが決まり、僕は浮かれていた。
その結果
「じゃ、俺追加の風船持って来るから」
「はい!」
先輩がヨーヨー釣りで使う水風船の予備を取りに行く間
僕は暇を持て余し、さっきまで作っていた水風船を眺める。
「…先輩、遅いな…」
「ごめん!お待たせ!」
「先輩!遅かったですね!」
ドタバタと走って来た先輩は息を整えてから事態を説明する。
「大変な事になったぞ!ヨーヨー釣りが他と被って出店を取り止めるか会議してる!」
「「「えええぇぇっ!?」」」
「どういう事ですか!?先輩!」
「…俺も課長に聞いたんだ。そしたら言われたんだ、諦めるか新しく企画して来いって…結月、俺と一緒に企画を新しく練ってくれないか?」
「はいっ!喜んで!」
「ふたりより、3人!沢山集まれば文殊の知恵って言うだろ?俺も手伝ってやるよ」
「ぼっ、僕も!手伝います!」
こうして、社内のみんなで協力し合って考えた結果僕達は"たこ焼き"に決まった。
「たこ焼き器…業務用…レンタル…」
僕がPCと睨めっこをしながら検索をしていると
「結月、たこ焼き器貸してくれそうな所見つかったか?」
先輩が後ろから肩に手を置き、覗き込みながら声をかけて来る。
「…全然です…流石、お祭りの定番って感じです」
「そっかー…だよなー…ん?なぁ、結月」
「はい?」
「これ、空いてないか?」
レンタル会社のHPから電話をかけて無事たこ焼き器をレンタルすることが出来た。
「よっしゃあ!これでお祭りに参加出来ますね!…先輩?」
「…あっ、あぁ…良かった…」
先輩が頬を赤く染め、そっぽを向く。
「…?先輩?どうしたんですか?…先輩?」
「なんでもない!さ!早くみんなにたこ焼き器レンタル出来たって言いに行くぞ」
「はい!」
こうして、着々と準備を進め、いよいよお祭り当日。
トラブルは突然起こった。
「神宮!神宮っ!」
「先輩!」
「結月!おんぶで運んで!」
「はいっ!」
神宮先輩を抱えて、医療テントまで運びベッドに寝かせる。
「先輩…」
目を閉じ、寝たままの先輩のほっぺにそっとキスをする。
「結月!今、大丈夫か!?」
後ろから声をかけられる。
「大丈夫です!今行きます!」
僕は返事をして先輩の元から離れた。
こうして、先輩と別れてから数時間後僕は再び先輩の居るテントへと向かうと
先輩はベッドに座り、スタッフの人と話をしていた。
「先輩!良かった、体調は大丈夫ですか?」
「あぁ、ごめんな。迷惑かけて…」
僕の頭を撫でながら先輩は申し訳なさそうな表情になる。
「大丈夫です!その分みんなで協力し合って、今は客足も落ち着いて居るので!」
「…なら、良かった」
「…え?」
グイッと先輩は僕を抱き寄せて、ハグをする。
「せっ、先輩っ!?」
戸惑う僕を無視して先輩は僕を強く抱き寄せたまま離さなかった。
「まだ、こうして居たい…ダメ、か?」
「…ッ!大丈夫、です…っ!」
さり気なくほっぺたにキスを仕返して来る先輩にくすぐったいと抗議をしつつ、いつまでもこの時間が続けばいいのにと噛み締めていた。
課長に呼び出された僕は夏祭りの仕事を任された。
課長の期待には応えたい。
だが、本当に僕で良いんだろうか?
新人は他にも沢山居るのにどうして課長は僕に指名したんだろうか?と自信を失くし、モヤモヤしていた。
昼休憩中の食堂で
「結月、おーい!結月!」
「はっ!?じ、神宮先輩!?どっ、どうしてここに?」
「昼休憩中なんだからみんな食堂に来るだろ。お前こそどうした?最近、元気ないけど」
「…実は、課長から『地元で行なう夏祭りの衣装製作と催し物』の企画をして欲しいって言われてしまって…本当に僕なんかで良いんでしょうか…他にも適任が居るんじゃって思うと…」
「なるほどな、それで病んで元気なかったのか」
「はい…」
「言っとくが、課長はそんなに深く考えてないと思うぞ?"楽しかったらそれで良い"ぐらいに思っておけ。先輩からのアドバイスだ」
「先輩…」
「そんなに不安なら俺も手伝うし、いつでも頼ってくれ」
「はい!先輩、ありがとうございます!」
こうして僕と神宮先輩の共同プロジェクトがスタートした。
「先輩!衣装のデザイン案持って来ました」
「おっ!法被かー」
「お祭りといえば法被かな、と」
「ま、そうなるよなー…盆踊り踊るって言われたらなー…」
「…ですよね」
「…でも、悪くはないと思うぞ?普通に羽織るだけだから、着脱もしやすいし」
「ありがとうございます!その案で課長に提出してみます」
「うん、いってらっしゃい」
手をひらひらと振って見送ってくれる先輩に見守られながら、課長に衣装のデザイン案を見てもらう。
暫く黙考した後、課長は口角を上げ、言った。
「よし!これで行こう!」
「…!はいっ!」
こうしてデザイン案が決まり、いよいよ本格的な準備段階へと進んでいった。
「柳さん、どう?キツい?」
「ぴったりです!」
わいわいと賑やかな雰囲気で夏祭りの準備が進む中、僕と先輩は資料室に篭って催物の製作へと進んでいた。
「今年はヨーヨー釣りなんだね」
「先輩、ここの出身なんですか?」
「うんん、小学生の時に一瞬だけ住んでたんだ」
「へー!だから、この夏祭りにも参加したことあったりするんですか?」
「あぁ、社会人になってからは初めてなんだけど。結月は地元の祭り参加してた?」
「してなかったですね、親が厳しくてずっと勉強してました」
「…そっか、じゃ!初めての祭りだな。…嫌じゃ、なかったら一緒に周って、俺が祭りのイロハを教えてやるよ」
「はい!ありがとうございます!」
こうして一緒に祭りに参加することが決まり、僕は浮かれていた。
その結果
「じゃ、俺追加の風船持って来るから」
「はい!」
先輩がヨーヨー釣りで使う水風船の予備を取りに行く間
僕は暇を持て余し、さっきまで作っていた水風船を眺める。
「…先輩、遅いな…」
「ごめん!お待たせ!」
「先輩!遅かったですね!」
ドタバタと走って来た先輩は息を整えてから事態を説明する。
「大変な事になったぞ!ヨーヨー釣りが他と被って出店を取り止めるか会議してる!」
「「「えええぇぇっ!?」」」
「どういう事ですか!?先輩!」
「…俺も課長に聞いたんだ。そしたら言われたんだ、諦めるか新しく企画して来いって…結月、俺と一緒に企画を新しく練ってくれないか?」
「はいっ!喜んで!」
「ふたりより、3人!沢山集まれば文殊の知恵って言うだろ?俺も手伝ってやるよ」
「ぼっ、僕も!手伝います!」
こうして、社内のみんなで協力し合って考えた結果僕達は"たこ焼き"に決まった。
「たこ焼き器…業務用…レンタル…」
僕がPCと睨めっこをしながら検索をしていると
「結月、たこ焼き器貸してくれそうな所見つかったか?」
先輩が後ろから肩に手を置き、覗き込みながら声をかけて来る。
「…全然です…流石、お祭りの定番って感じです」
「そっかー…だよなー…ん?なぁ、結月」
「はい?」
「これ、空いてないか?」
レンタル会社のHPから電話をかけて無事たこ焼き器をレンタルすることが出来た。
「よっしゃあ!これでお祭りに参加出来ますね!…先輩?」
「…あっ、あぁ…良かった…」
先輩が頬を赤く染め、そっぽを向く。
「…?先輩?どうしたんですか?…先輩?」
「なんでもない!さ!早くみんなにたこ焼き器レンタル出来たって言いに行くぞ」
「はい!」
こうして、着々と準備を進め、いよいよお祭り当日。
トラブルは突然起こった。
「神宮!神宮っ!」
「先輩!」
「結月!おんぶで運んで!」
「はいっ!」
神宮先輩を抱えて、医療テントまで運びベッドに寝かせる。
「先輩…」
目を閉じ、寝たままの先輩のほっぺにそっとキスをする。
「結月!今、大丈夫か!?」
後ろから声をかけられる。
「大丈夫です!今行きます!」
僕は返事をして先輩の元から離れた。
こうして、先輩と別れてから数時間後僕は再び先輩の居るテントへと向かうと
先輩はベッドに座り、スタッフの人と話をしていた。
「先輩!良かった、体調は大丈夫ですか?」
「あぁ、ごめんな。迷惑かけて…」
僕の頭を撫でながら先輩は申し訳なさそうな表情になる。
「大丈夫です!その分みんなで協力し合って、今は客足も落ち着いて居るので!」
「…なら、良かった」
「…え?」
グイッと先輩は僕を抱き寄せて、ハグをする。
「せっ、先輩っ!?」
戸惑う僕を無視して先輩は僕を強く抱き寄せたまま離さなかった。
「まだ、こうして居たい…ダメ、か?」
「…ッ!大丈夫、です…っ!」
さり気なくほっぺたにキスを仕返して来る先輩にくすぐったいと抗議をしつつ、いつまでもこの時間が続けばいいのにと噛み締めていた。



