定時に上がり、傘置き場で傘を探す。


だが…


「あれっ?今日、傘持って来てたはずなのに…」


傘がない、僕は慌ててバッグの中身を確認する。


だが…


「ない…」


どうしようかと頭を抱えていると神宮先輩が来た。



「結月?どうした?」


「先輩…!今日、傘持って来てたはずなんですけど、傘置き場にもバッグにもないんですよね〜?」


「…じゃあ…入る?俺の傘に」


頬を赤く染めながら先輩は言う。


「い…良いんすか?」


「良いよ、入って。風邪引かれたら俺、寂しいし」


「先輩…!」


僕は先輩の言葉に甘えて先輩の差す傘に入れてもらう。


こうして、ふたりで相合い傘の状態で駅に向かい、別れた。


道中、他愛ない会話を繰り広げ楽しくもあり、恥かしくもあり、なんだか頬も心なしか熱くなっているような気もする。


僕、神宮先輩が好きなんだ。


でも、先輩は同性だ。


この気持ちは蓋をして、今のままでいよう。


きっと、先輩だって僕の気持ちを知っても困らせて迷惑をかけるだけだ。