人々の噂は、ついに王城の使用人の耳にも入った。
「皇女さまは、誰の話にも乗らない『嫁き遅れ』だそうだ」
「帳に愛されているお方の相手は、帳が選ぶとも聞いたわ」
噂は人づてに尾ひれがついて広がり、巡り巡ってその噂は、桔梗の耳にも届いた。
「嫁き遅れ……!わたくしが、そんな……!」
プライドの高い桔梗は、その言葉に激しく動揺した。王城内の使用人たちは、直接桔梗に面と向かって口にすることはしない。しかし、彼女を嘲笑うかのような刺さる視線や、使用人同士の何気ない会話が、彼女の心を深く傷つけた。
怒り、悲しみ、そして焦り。これらの行き場のない感情が入り混じり、桔梗は荒れ狂った。
「わたくしは帳に愛された皇女よ!それなのに、なぜ……!なぜ誰もわたくしを……!」
部屋に閉じこもり、壁に飾られた豪華な絵画や置物を次々と払い、叩き壊していく。ガラスが砕ける音、陶器が割れる音、その全てが、桔梗の心の叫びを物語っていた。
そんなある日、霜霞国中に住む人々に向けた、界理の御告げがあった。
『碧き祠にて、霊神と王族の娘との婚儀を』
その御告げは、地下牢にいた蓮花たちにも聞こえていた。
霜霞国内で、唯一霊神=妖神であるということを知る蓮花は、動揺を隠せない。碧嶺と久惔しかまだ知らないが、他に2人、妖神がいることを蓮花は知っている。



