名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー


周りの使用人はそう言って慰めるが、桔梗の心は満たされることはなかった。日に日に増していく焦りだけが募り、彼女を蝕んでいく。彼女は、これも全部、蓮花から返ってきて、焼けただれたようになり、治ることのなかった傷のせいだと、責任を転嫁させた。

そして、蓮花を、鞭で打つ。

「傷もの皇女なんて、嫁がせるわけにはいかないわ」

この王妃の言葉が、余計に彼女を抉った。

「まったく、いい娘だと思っておったのに。桔梗も、他の兄弟や姉妹と同じ、役立たずだったとはな」

と、皇帝はため息を吐きつつ、呆れながら、鮮やかな求婚の手紙を、開くことなく破り捨てた。それらは、決して桔梗の元には届くことはない。

しかし、桔梗は知っていた。皇帝と王妃が、桔梗の目には入らないところで、ひそかに、すべての求婚の手紙を破り捨てていることを。彼女は、王家にとって、もう価値のない、哀れな道具以下にになり下がっていた。

彼らは桔梗を王族の汚点としており、外に嫁がせることを恥としていた。

「誰のところにも嫁がせはしない」

王妃はそう言い放つ。それが、娘への愛だと信じて疑わない両親。それが、自分勝手な歪んだ愛情であり、桔梗を蝕んでいく毒だとも知らずに。