名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

星天湖という、夜空に浮かぶ星のような花が、島人の数だけ浮かべられている湖が、島人全員のお気に入りの場所として意見が一致した。

この花は星花といい、夜になりあたりが暗くなると、淡く、やさしい光を放つ。また、湖の囲いには、風が吹くと涼しげな音が鳴り響く、詠鈴も吊るされていて、とても幻想的なのだ。

絵描きの男性は、無言で、せわしなく手元を動かす。これで島人たちと馴染むことができるのでは、と、蓮花は安堵した。しかし、今度は周りに島人もいて、皆の注目を浴びている中で、無闇に聞くことは憚られた。

出来上がった絵を受け取りに行く日を約束したので、その日こそ聞こうと思ったのだった。

その受け取り日当日。新たな島人が来るということで、久惔に言われて乗り込んだ舟。

霜霞国の門から現れたのは、桔梗だった。

蓮花は、その姿に一瞬、戸惑いを隠せない。だが、すぐに深呼吸をして、自分を落ち着かせる。この耳飾りのおかげで、桔梗からは、蓮花に似ても似つかない人に見えているはず。声だって変わっているのだから、いつも通り話せばいいだけ。

霜霞国の皇女が、どういった理由で名喪人となったのか、蓮花には想像もつかなかった。短期間に2人目の島人が来たからか、周りの島人たちは、桔梗をえらく不思議がった。