名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

目の前の彼で、今日は4人目。蓮花が受け入れた名喪人の記憶は、4人目で、なぜか、何も聞こえなくなっていた。

今までは、少なくとも、聞こえづらかったり、途切れ途切れに聞こえたりといった形で、名は分かっていた。もしかすると、本当に悪いことをしたから、名が聞こえてこないのでは、なんて最低な考えに至り、蓮花は、頭を振った。

しっかり気を持たねば、と、蓮花が自分の頬を軽く叩いたところで、男性に声をかけられた。

「なぜ、この舟に乗っているのか知ることって、できるのか?」

「はい。もちろん可能です。ですが、取り乱さないでください。舟上なので、危ないですから」

そう前置きして、蓮花は、霜霞国の帳制度の話を、男性にした。構えていたが、男性が逆上したり、取り乱すことは一切なかった。蓮花にとって、初めての案内だったから、これが普通なのかも、なんて、のんきに考えていた。

後に碧嶺から怒られてしまうが、無事に、久惔の待つ舟着き場へたどり着いた。と思ったが、そこに久惔の姿はなく、頭に角を持つ、碧嶺がいた。

碧嶺をみて、少し驚いていた男性だったが、素直に、碧嶺の後ろを歩いていった。

蓮花は、碧嶺と新しい島人の後ろをついていこうとした。その時、ふいに後ろから袖を掴まれた。振り返ると、そこにいたのは久惔だった。