名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

出来上がった耳飾りは、蓮の花ではなく、小さな咋花を模したもので、碧嶺の耳飾りと違ったことに、少し気落ちしてしまった。

「かわいらしい花だね」

碧嶺は、蓮花の耳元で揺れる耳飾りを見て、優しく微笑んだ。

「家の庭に咲いていた花で、庭師の方の話によると、咋花というそうです。不屈の生命・ひそやかな幸福・変わらぬ愛・支え合う絆・忍耐・癒しといった花言葉があり、ひたむきな祈り・ゆるぎない信頼・縁を結ぶ出会い・静かなる幸運という葉にも意味があり、群生するそうなので、広がりつづける縁とも言われているらしく、私の好きな花でもありまして……」

話している間に、だんだんと恥ずかしくなった蓮花は、口を噤んだ。碧嶺は、その蓮花のかわいらしい姿に、静かに笑みを浮かべていた。

「それはいいことを聞いた。翠嶺島でも見られるようにしようか」

「本当ですか?」

蓮花は、目を輝かせた。

「ああ、任せてくれ。久惔を待たせすぎはよくないから、そろそろ行くといい」

「はい、行ってきます!」

碧嶺に見送られ、蓮花は久惔の霊と共に、舟着き場まで向かった。その胸には、新しい出会いへの期待と、少しの不安が、交錯していた。

蓮花が舟着き場に到着すると、やはり腕に羽が生えた久惔がそこに立っており、蓮花に注意事項を述べる。その姿は、やはり炎の鳥人のように見える。