名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

「良かった、良かった」と、碧嶺は心から安堵したように頷き、蓮花から聞いた、その人の正しい名を、再び受け取った。

「その名でもう一度、儀式を行おう」

碧嶺は、そう言って、蓮花に儀式を最後まで見ていくかと問いかけた。

「え、でも。私なんかがいていいのでしょうか?」

内心、気にはなっていたものの、碧嶺が周りに隠して、一人で行っていた儀式である。のぞき見してしまった自分なんかが、いていいはずがないと、蓮花は、遠慮がちに否定した。

「なーに。僕がいいと言っているんだから、蓮花はここにいていいんだよ。それに、蓮花の力がなければ、できなかったことだからね」

その言葉に、蓮花は、彼の隣にいることを許されたような気がした。

「そこで見ていておいて」

碧嶺は、そう蓮花に告げると、立ち上がった。そして、蓮花には聞き取れない詞を、静かに唱え始める。すると、足元から光が漏れ出し、天井に向かって、そこだけ風が吹き上げているかのように、彼の御髪がなびく。

彼の髪は、白緑色に変わり、同時に、角の色は墨色に、瞳の色も変わる。普段、隠している右目が、赫色に見えたのは、見間違いでもなんでもなかった。左目は、角の色を吸収したかのような、神秘的な緑青色に輝いている。