名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

そして、蓮花は今、碧嶺に連れられ、島人たちへの挨拶回りを行っている。普段、この島に新たな客人が来ると、島人一人ひとりと顔を合わせ、親睦を深めるのが慣習らしい。だからであろうか、島人たちは、蓮花を温かく迎え入れてくれた。

蓮花は、彼らと自然と握手をすることができた。だが、一つだけ問題があった。それは、蓮花が、一日に5人までしか、記憶を受け取ることができなかったことだ。

あんなに「任せて!」と息を巻いたのに、たった5人が限界なんて、と蓮花は落ち込んでいた。そんな蓮花を見て、碧嶺は、優しく慰めてくれた。

「ゆっくり休んで、回復してからまた始めよう。島人も、そこまで大人数ではないから、大丈夫だよ」

島人たちも、蓮花を気遣ってくれた。

蓮花は、その日、記憶を受け取った5人の名前を碧嶺に伝え、彼の部屋を出る。この数日間で、蓮花は、自分がお借りしている部屋と、碧嶺さんの部屋とを行き来する分には、一人で行動できるようになった。

蓮花は、碧嶺に伝えた5人の名前の中の1人の字を伝え間違えたかもしれないと考至り、もときた廊下を慌てて戻っていた。伝え間違えたままだと、後々、島の人にも迷惑をかけてしまうことになるのではないか。