名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

今もなお、桔梗が熱に苦しんでいるのは、その呪いが跳ね返ってきていたためだった。

従者は、桔梗が名喪人となった蓮花を覚えているのは、帳に愛されているお方だからと、都合よく解釈していた。従者が、早く結果を持ってくるはずだと、桔梗は、熱に苦しみながら日々を過ごす。

その間、王も王妃も、見舞いに来ることは一度もなかった。桔梗は、たった一人の娘で、大切な皇女のはずだが、彼女の部屋へ来るのは、命令に従う、哀れな使用人のみだった。

普段は何も感じない、冷酷な心を持つ桔梗だったが、熱に侵された今、この部屋は、ベッドは、ひどく広く寂しく感じられた。豪華な調度品に囲まれていても、そこに満ちているのは、虚しさだけ。むしゃくしゃして、部屋のものを手当たり次第に投げ、当たり散らす。壁にぶつかった陶器が、甲高い音を立てて砕け散る。

使用人が慌てて駆けつけるも、彼らも手がつけられない桔梗の姿に、心の中で呆れていた。そんな使用人たちの冷めた態度を察した桔梗は、「誰も入ってこないで!」と金切り声をあげ、まるで幼子のようにベッドに潜り込んだ。

その間、やはり王も王妃も、一度として見舞いに来ることはなかった。彼女の周りには、誰一人として、心から彼女を案じる者はいなかった。

蓮花は、碧嶺から頼み込まれていた。