名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

王妃を見上げつつ、蓮花は思った。
この女の人が母親の姉。自分自身の伯母なのかと。つり目の奥が氷のように冷たく、見下ろされる蓮花は、恐怖で足が動かなかった。

両親と離れたくなくて、父と母の着物の裾を、シワになるほどぎゅっと掴んだ。だが、その抵抗も無駄に終わった。
使用人が無慈悲なまでに、無理やり蓮花の手を離させる。まるで枝から無理やりもぎ取られた小さな蕾のようにように。両親は蓮花も一緒にと、哀願するように交渉を試みるも、その声は空虚に響くだけで、叶うことはなかった。蓮花は伯母である王妃の命により、冷たい手の使用人に引きずられるようにして連れていかれた。

王城の内部は、外の庭園の華やかさとは打って変わり、重厚で暗い空気に満ちていた。
蓮花をここまで連れてきた使用人が、無感情な表情で、とある扉を叩く。

「こちらが皇女さまのお部屋になります」

短い言葉とともに扉が開くと、蓮花と同年くらいの、華やかな着物を着た女の子が姿を現した。彼女は蓮花を頭の先から足の先まで、まるで品定めでもするかのようにじっくりと見つめてから、口を開いた。

「誰よ、その子」

その声には、嫌悪と侮蔑が滲み出ていた。

使用人が蓮花の説明をすると、皇女は心の底からつまらなそうな顔をする。