名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

どのくらい経っただろうか。雲の動きが止まったところで、蓮花はそっと目を開ける。降りろということなのだろうと考え、雲から降りて、地に足をつける。蓮花が離れた途端に、雲は形を変えた。人の形を模した雲は、蓮花を先導するかのように、音もなく歩き始めた。蓮花は、その後を、ただついていく。

見たこともない幻想的な景色に目を奪われつつも、蓮花は、はぐれないようにと、雲を追いかけた。雲が案内してくれた先では、碧嶺さんが、誰かと真剣な表情で話している。蓮花は、その様子を見て、邪魔しないようにしようと、少し離れた位置に移動した。

雲はどこに……。蓮花は、姿を探すと、なんと碧嶺の元へ近づいていた。雲を止めたりできないか、蓮花は必死に考えを巡らせる。だが、何も思い浮かばない。そうこうしているうちに、雲は、音もなく碧嶺の元へとたどり着いてしまった。

すると、なんと雲は、まるで子犬が主人に甘えるかのように、跳ね飛び、碧嶺の肩に乗った。そして、髪で隠れている碧嶺の耳元で、なにやら話しているようだった。

碧嶺と話していた人物の表情は、蓮花から見えない。雲は、蓮花のいる方を指しており、気づいたときには、碧嶺と目があってしまった後だった。碧嶺と話していた人物も、その視線に気づき、蓮花の方へ振り返る。