名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

蓮花は、自分が上向きになっていることを、そこで悟った。

起き上がろうと、手をついたそれは、とても柔らかく、高級な寝具だと気づいた蓮花は、驚いて、慌てて布団から降りた。

部屋の中には誰もいなかった。静寂が、蓮花を包み込んでいる。蓮花は、そっと扉を開けた。その先には、女性とも男性ともつかない、中性的な背格好の者が立っていた。

「蓮花さま。碧嶺さまより聞き及んでおります。お身体の具合はいかがでしょうか」

その声は、驚くほど澄んでいて、心地よかった。

「えっと、あの大丈夫です。それより碧嶺さんはどこに?」

蓮花は、状況を把握しようと、思わず尋ねた。

「碧嶺さまは今、島人の方々と共にいらっしゃいます」

蓮花が心の中で浮かんだ「島人とは?」という疑問を知ってか知らずか、その者は「此方へ」と、蓮花を別の部屋へと連れて行った。そしてあれよあれよという間に、蓮花は着替えさせられる。言われるままに腕を動かす、まるで操り人形のようだ。

「雲覇が移動手段を整えるまで、しばらくお待ちいただけませんでしょうか、蓮花さま」

「むしろ、丁寧に手厚く応対してくださって、私としてはどうすれば良いのか分からないので、全部お任せします!えぇーっと……」