碧嶺が言い終わるや否や、蓮花の胸元に刻まれていた奴隷の紋様が、まるで肌から離れるかのように宙に離散し、やがて淡い光の粒となって、霧のように消えていった。痛みも、熱さも、跡形もなく消え去った。
「解呪されたのですか?」
蓮花は、信じられない思いで、その場所に残っていたはずの、奴隷の紋様があった場所を、そっと手で触れた。そこには、何もなかった。ただ、柔らかな、蓮花自身の肌があるだけだった。
「ああ、新しい紋を刻んでもいいか?」
碧嶺は、蓮花の表情を見て、優しい声で尋ねた。
「もちろんです」
蓮花は、何が起こるか、どんな代償や誓約があるのかも聞かず、即答した。彼が、従妹の桔梗のように、蓮花を縛り付けるような紋を刻むとは思わなかった。そして、何よりも、幻衣を通れず、ずっとこの場所にいることが嫌だったからだ。
「それでは、名を」
霊誓紋を刻むための儀式は、蓮花と碧嶺が、両手を合わせなければならなかった。蓮花は、少し照れくさかったが、恥ずかしがっている場合ではない。蓮花は、ゆっくりと碧嶺に手を伸ばし、彼の大きな、温かい手に、そっと自分の手を重ねた。
蓮花は、静かに自分の名を告げた。
「渓科 蓮花」
碧嶺も、自身の名前を言う。
「碧嶺」



