「蓮花、手を伸ばしてみてくれないか」
その言葉に、蓮花の肩が震えた。手を伸ばしたところで、自分の名は浮かばない。先日の婚約の儀の時のように、また、絶望を突きつけられるのではないか。蓮花の脳裏に、あの時の情景がまざまざと蘇る。
碧嶺は、そんな蓮花の考えていることが分かったのか、優しい声で言葉を続けた。
「ここには、幻衣という、透明な幕がある。ここは、妖神、そして、名喪人として霜霞国を追いやられた人たちが暮らす島だ。霜霞国の者が来たことはないが、他の国に見つからないとも言えない。この幻衣には、そのための対策がしてある」
霜霞国のように、名を確かめるために手を伸ばしてくれと頼んでいるわけではない。碧嶺の言葉に、蓮花は、少しだけ安堵した。
蓮花は、名喪人の中でも異例なのだという。総じて、名喪人は、帳から名が消えたと同時に、歴史からも消え、存在がなかったこととなり、自身の名も皆、分からなくなるようだ。しかし、蓮花は、自身の名をはっきりと、記憶に留めていた。幻衣の幕がどう判断するか分からない。だから、それを確かめたいようだった。
ただ草木が生い茂っているようにしか見えないけど……。
不思議に思いながら、目の前に広がる、森に見えるような空間に、手を伸ばす。
碧嶺の言葉に従い、少し戸惑いながらも、ゆっくりと手を伸ばした指先に何かが触れた。
その言葉に、蓮花の肩が震えた。手を伸ばしたところで、自分の名は浮かばない。先日の婚約の儀の時のように、また、絶望を突きつけられるのではないか。蓮花の脳裏に、あの時の情景がまざまざと蘇る。
碧嶺は、そんな蓮花の考えていることが分かったのか、優しい声で言葉を続けた。
「ここには、幻衣という、透明な幕がある。ここは、妖神、そして、名喪人として霜霞国を追いやられた人たちが暮らす島だ。霜霞国の者が来たことはないが、他の国に見つからないとも言えない。この幻衣には、そのための対策がしてある」
霜霞国のように、名を確かめるために手を伸ばしてくれと頼んでいるわけではない。碧嶺の言葉に、蓮花は、少しだけ安堵した。
蓮花は、名喪人の中でも異例なのだという。総じて、名喪人は、帳から名が消えたと同時に、歴史からも消え、存在がなかったこととなり、自身の名も皆、分からなくなるようだ。しかし、蓮花は、自身の名をはっきりと、記憶に留めていた。幻衣の幕がどう判断するか分からない。だから、それを確かめたいようだった。
ただ草木が生い茂っているようにしか見えないけど……。
不思議に思いながら、目の前に広がる、森に見えるような空間に、手を伸ばす。
碧嶺の言葉に従い、少し戸惑いながらも、ゆっくりと手を伸ばした指先に何かが触れた。



