「ここは……どこだろう」
枷をつけられた足と手のせいで、バランスを崩さないように、そろりと立ち上がって周りを確認しようとすると、チャプ、と水音が響き、自身の身体がぐらついた。尻餅をついた蓮花は、冷たい水の感触に、ここが水の上だとようやく気づいた。
どうやら、小さな舟に乗っているようだった。
舟の先端に、ぽつりと一つ、船灯の明かりがぼんやりと辺りを照らしている。その光は、蓮花の心をわずかに温めてくれるようだった。暖がとれるかもしれないと、蓮花は、その光にそっと近づく。
丸い玉が発光しているようだった。
「蓮花──。羽守蓮花」
どこからともなく、優しい声が聞こえてきた。その声に、蓮花は、耳を澄ませる。蓮花の名を呼ぶ声は、なんと、その光る玉から発せられていた。得体の知れないものが、自身の名を呼ぶものだから、蓮花は恐怖を感じ、無視を決め込んだ。
「やっぱり聴こえてないのか……」
光る玉の声は、寂しそうに、そして悲しそうに呟く。その声に、蓮花は堪えきれなくなった。
「私の名前は、渓科 蓮花よ。間違えないで」
蓮花は、そう告げた後、ハッとして口を噤んだ。だが、もう遅い。
光の玉は、蓮花の言葉に、少しだけ嬉しそうに、そして、懐かしむように語り始めた。



