名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

名の登録の儀式をしたあの日から、7年が経った。蓮花が初めから名喪人だった理由を解明すると公言していながら、原因究明なんてしてくれたことなど一度もない。母とも父とも、7年間、一度も会えていない。2人は今、どこで、どうしているのだろうか。

告げられたのは、2人は遠くの場所に遣いを頼んだ、ということだけ。遠くと言えど、霜霞国内のはずである。7年もの間戻ってこないのはおかしいと、蓮花は心の中では思っていても、誰にも聞くことはできなかった。

「また、名を呼んでもらえる日が来るだろうか」

蓮花は、夢の中だけで、両親に名前を呼んでもらえる。その夢の中で、蓮花はただただ幸せだった。せめて、どうか、元気に過ごしていてください。蓮花は、そう祈ることしか、できなかった。


しかし、無常にもいつも響く金切り声。

「ちょっと、これなんなのよ!食べられるわけないじゃない!」

ガシャンと、陶器が割れる音が響いた。蓮花の心臓が跳ね上がる。また、料理を投げられたのだろうか。使用人の誰かに、破片が当たっていないだろうか。大切なお皿は欠けていないだろうか。

そんな心配をしながら、足早に台所へ向かうと、そこには怒りで肩を震わせている、従妹の桔梗の姿があった。