名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

中には、3人分の食事とお茶のセットしか入っていなかった。朝、たくさん食べてきてよかったと、3人に気づかれないように、そっと胸をなでおろした。

普段から外で駆け回り、父の仕事を手伝い、草花を編んでいた蓮花。彼女にとって地面へ座ることは慣れていたことでもあったので躊躇なく腰を下ろした。

王城の庭を案内してもらうということで、動きやすくて汚れてもいい服装で来ていた蓮花。
王族や貴族は自身の着ているドレスが汚れることを嫌う。
だからこそ桔梗は嫌がらせとして指示したのにもかかわらず、特段気にするほどもなくあっさりと座った蓮花の行動に唇の裏を噛みしめる。

地面に生えている芝は、きれいに手入れがされていて、青々としている。座っていても、お尻にちくちく刺さるような不快感はなかった。座り心地が良かったのである。蓮花は、その座り心地の良さに、少しだけ笑みがこぼれた。

歩き、泣き、走り疲れてしまった蓮花は、いつの間にか寝てしまっていたようだった。カチャカチャと食器類が片付けられる音で目が覚めた。座っていたはずなのに、眠ってしまったからか、地面へ寝そべっていた蓮花は、起き上がった。服には、少し土と草がついてしまっている。

「私は着替えたいから一度部屋に戻らせて。あなたは?」

桔梗が、まるでどうでもいいことのように、蓮花に問いかけた。