名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

その温かい声に、蓮花は一気に安堵し、胸いっぱいに膨らんだ期待を口にした。

「白い小さな花がたくさん咲いてあって、ハートのかたちをした花びらが6個ついてあるの。葉っぱは厚くて、お花のすぐ下に4個ついてるんだよ!摘んでも踏んじゃっても、次の日には元気でね!」

蓮花は、興奮しながら、庭の片隅で咲いていた花の特徴を、一つ一つ、身振り手振りを交えながら丁寧に話した。その言葉は、まるで庭の草木を愛でるように、純粋で温かかった。庭師の老人は、蓮花の話を一つも聞き逃すまいと、耳を傾けながら、「ほうほう」「そうかそうか」と、相槌をうってくれる。その優しい声が、蓮花の心をさらに温かくさせた。

そして、蓮花が全て話し終わった頃を見計らって、老人は静かに口を開いた。

「それは、咋花かもしれんのぉ」

老人は、懐から丁寧に巻かれた図録を取り出し、そっと広げた。その仕草は、まるで大切な宝物を扱うかのようだ。

「図録を持ってきておるから待っておくれよ」

蓮花は、その言葉に胸が高鳴った。

「かのはな?」

「そうじゃ。お嬢さんが丁寧に教えてくれたのもあってなぁ、これしかないだろうと思ったんじゃよ。ほれな」

老人が開いて見せてくれた図録には、蓮花が話した特徴を持つ花が、精緻な筆致で描かれていた。