名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

夕餉は、てっきり王家の人たちも含めて両親とみんなで食べるものだと思っていた。しかし、そんなことはなく、凛音が食事を運んできてくれたことを除けば、いつも通り家と同じ3人で食べた。温かい汁物から立ち上る湯気が、疲れた身体を癒してくれる。蓮花は、両親と囲む食卓の温かさに、されど王城での食事に緊張していた。

翌日、朝日が窓から差し込み、部屋の奥まで明るく照らしていた。筆刻頃には、両親も蓮花もすでに起きていた。蓮花はそっと立ち上がり、部屋の窓を開いた。冷たい朝の空気が、顔に触れて、身が引き締まるような感覚に包まれる。とても澄んでいて、ひんやりとした清涼感が心地よかった。微かに土の匂いや、草木の緑の香りが混じり、柔らかい風が肌を優しく撫でていく。

家の庭で、いつも隅の方に咲いていた、名も知らない白い花。その花が、この王家の広大な庭にも咲いているのかもしれない。そう考えると、心が弾むようだった。皇女の桔梗と、この王城の庭を巡ることができるなんて、何て素敵なんだろうかと、蓮花は今から楽しみで仕方がなかった。

朝餉は、昨日に「食べすぎないで」と言われていたことを思い出し、蓮花は控えることにした。いつもはしっかり朝餉を食べる蓮花が、少ししか食べないものだから、両親は余計に心配する。だが、皇女さまの桔梗との約束を違えるのは良くはないはずである。