名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー


「僕の予感は正しく、蓮花は幻衣にはじかれてしまった。そこで僕が刻んだ紋が霊誓紋。逑の証なんだ。迷子になっていた女の子とそれ以上会えなかったことがずっと気がかりでね。当時は気になるなくらいだったんだ。だけど成長した蓮花を見たとき気になるのは好ましく思っているからだと気づかされた。妖神は執着がないらしいと先代からは聞いていたのに、君は僕の心を昔も今もかき乱す。」

さっきは蓮花が僕のことを不思議な男の子と言っていたけど、僕からしてみれば蓮花のほうがよっぽど不思議な女の子だったんだよと笑う。

「了承もなく僕の伴侶としてしまったことにはすまなく思っている。いやだったらいつでも言ってくれて構わない。」

「黛黯さんが解呪はできないって...。」

「できないことはない。僕が先代から引き継いだように次世代の妖神に記憶を引き継がせるだけでいい。」

「そうすると碧嶺さんはどうなるんですか?」

「存在が消滅するだけだ。」

それを聞いた蓮花は手で口元を覆う。
その言葉に胸が締め付けられるようだった。彼は、いつだって蓮花の傍にいてくれた。悲しい時も、苦しい時も、ただ静かに寄り添い、温かい光を灯してくれた。
自らの命をも懸けるなんてこれを愛と呼ばずに何と呼ぶのだろうか。
碧嶺の想いの重さに触れた蓮花の頬を涙が伝う。