名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

凛音さんは、蓮花の部屋まで案内することを快く承諾してくれた。彼女の足取りは軽やかで、迷路のような王城の廊下を、まるで自分の庭を歩くかのように、迷うことなく進んでいく。長い廊下をいくつも曲がり、いくつもの重厚な扉を通り過ぎた先に、蓮花の部屋があった。

部屋には両親とも揃っており、蓮花をとても心配してくれていた。父も母も、蓮花の姿を見るなり、安堵した表情で駆け寄り、その小さな身体を包み込むように抱きしめた。蓮花は、彼らの温かさと、自分を案じる優しい声に、「ただいま!」と声をかけた。

両親は蓮花を送り届けてくれた凛音さんにお礼を伝える。すると、彼女はにこやかに微笑み、「王城で迷っている子どもを放ってはおけなかっただけですから」と、さらりと告げて仕事に戻っていった。その言葉には、一切の打算や偽りがなく、ただ純粋な優しさだけが宿っていた。

蓮花は、両親に、従妹の桔梗と一日で何をしたか、余すことなく伝えた。学問の部屋のこと、舞の部屋のこと、そして、桔梗の表情が曇っていったことも。それでも心配している両親に、翌日になにをするかという予定もしっかりと伝え、「明日はいっぱい遊んでくれるって約束したの!」と、屈託のない笑顔を見せた。