幼い妖神はまだ霊力が弱く人に声を聞かれたり、ましてや姿を見られることはないと先代から教えてもらっていたのに。だから僕を初めて見つけた人間に興味を持った。王城に仕えている人々に木の上の何もない空間に向かって話しかけている女の子なんて気味悪がられるだろうから、話しかけないことを条件に、一応触れないようにとも伝え、道案内をしたのだ。」
「不思議な男の子のこと覚えています。似てるなとは思っていたんですけど、まさか昔の碧嶺さんだったなんて!」
面と向かってあの時はお礼を言えなかったから今、改めて蓮花はお礼を伝えると、碧嶺は王城の庭は僕のひそかな遊び場だったから気にしないでと言う。
併せて、覚えてくれているなんて思っていなかったからと嬉しそうに微笑んだ。
「あれ以降王城の庭で姿を見かけることはなかったから、家に帰ったのかと思っていたんだ。だから、名喪人として島にやって来た時には驚いた。迷子になっていた女の子が立派に成長していたからね。そして今までの島人と違い、名を覚えていると久惔から聞いた時、幻衣を通れないのではないかと思った。」
夜風が吹いて、風の波に靡く碧嶺の髪。
さらわれた髪に隠れていた碧嶺の表情は哀しそうであった。



