名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

それぞれの故郷の記憶を胸に、新しい国の礎を築くことに、誰もが喜びを感じていた。活気に満ちた人々の声が、夜の森にこだまする。

「国を作るなら、国名と王と妃が必要では?」

「王と妃は決まったようなものでしょう?」

その言葉に、周りの人々がクスクスと笑い、頷いた。

「そうか、なら後は国名だけだな!」

人々は蓮花と妖神の存在を忘れ、生き生きと意見を交わしていた。蓮花と妖神たちは、その光景をただほほえましく見守るしかなかった。胸の奥に、温かい光が灯ったようだった。

「蓮花。今いいかな?」

優しい声が耳元で響き、蓮花はハッとして顔を上げた。碧嶺だった。蓮花は席を立ち、皆の輪から離れる。碧嶺はどんどん歩き、森の奥深くへと進んでいく。木々のざわめきが次第に遠ざかり、代わりに草を踏む音が心地よく響く。

森を抜けた先に広がるのは、満天の星空の下で静かに息づく、広大な草原だった。草を踏む音が心地よく響き、虫の音が遠くでかすかに聞こえる。碧嶺はそこで立ち止まり、蓮花を振り返った。その瞳は、星の光を宿しているかのように、優しくきらめいていた。

「蓮花。霊誓紋について話していなかったから、今伝えさせてくれ。」

遅くなってしまってすまないと謝る碧嶺に蓮花は首を横に振る。