名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

深い疲労感が全身を覆っていた。碧嶺は優しく微笑み、蓮花の額に手を当てた。その手の温もりが、蓮花の心を安らげる。蓮花は再び意識を深い眠りへと委ねた。「ゆっくりお休み、蓮花。」温かい光に包まれたような、穏やかな眠りだった。

あの雨の夜の出来事は、当事者のみしか知らないはずだった。蓮花は、もう二度と口にするつもりはなかった。しかし、その夜の出来事を、碧嶺と久惔が人々に話してしまったのだ。

「蓮花は話したがらないが、このことは隠すべきではない」

碧嶺の言葉に、人々は静かに耳を傾けた。久惔は、その夜の出来事をありのままに語り、桔梗がどれほど蓮花を憎んでいるか、そしてその憎悪がどれほど常軌を逸しているかを詳細に説明した。

その話を聞いて、一番に憤慨したのは、蓮花の育ての母である澄紗だった。

「桔梗は、私にとって姪にあたります。ですが、蓮花を傷つけたことは、決して許されることではありません。親族だからといって、容赦する必要はないでしょう」

澄紗の瞳は、怒りで燃えていた。彼女は、桔梗が幼い頃、親戚である自分たちにどれほど見下した態度をとっていたかを思い出すと、今でもはらわたが煮えくり返りそうだと表現した。そして、今回の凶行で、彼女の悪意がどれほど深いかを確信したと続けた。