彼女の言葉は支離滅裂で、恨み言と八つ当たりだった。
「お前たちがいなければ、私はずっと……!帳に愛された、ただ一人の皇女として生きていけたのに!」
彼女の瞳には、もはや理性のかけらも残っていなかった。
その言葉に、蓮花は胸を締め付けられるような痛みも、同情も一切感じなかった。
「お前には、私の気持ちなど分かりはしない!」
桔梗は、蓮花の言葉を聞く耳を持たず、憎悪と憤りから、しゃくりあげるように泣き始めた。だが、その涙は悲しみの涙ではない。自身の思い通りにならない状況への怒りであり、帳に選ばれながらも、その地位を脅かされたことへの悔しさだった。
彼女の瞳からあふれる涙は、枯れることを知らない。それは、我慢していた感情が爆発したからではない。自身の身勝手な欲望が満たされないことへの、どうしようもない自己憐憫だった。
蓮花は、そんな桔梗を憎むことはできなかった。ただ、これ以上関わるべきではない、と冷静に判断しただけだ。
蓮花は王族3名には無慈悲になることにした。
碧嶺が暴れる桔梗を抑え、誰も傷つけることのないように縛り上げる。
その間、久惔が蓮花の肩の傷を治してくれた。
激しい雨はいつしか止み、空には薄い月明かりが差し込んでいた。
その光は、何事もなかったかのように、静かに3人の姿を照らしている。



