名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

ひとしきり泣いた後、蓮花は疑問に感じていたことを口にする。

「父さんは……?どこにいるの?」

その言葉を聞いた母親の顔が曇る。悲しみの涙を流しながら、母が腕の中で嗚咽した。

剛禺は涙を流す母を見かねて、代わりに説明してくれた。

「2人が舟に乗っていた時には気を張っていたのか、久惔でさえ気づいていなかった。舟を降りて島へ入った途端に力が入らなくなったのか、倒れた。手の施しようがなかった。顔は傷ついていなかったが、服で隠れている箇所は口にするのもはばかれるほどひどい状態だった。できる限り手は尽くしたが……」

剛禺の言葉が途切れると、沈黙が訪れた。蓮花はその沈黙で悟った。父が痛めつけられ、両親がこの島へと追放された時に、父が帰らぬ人となってしまったことを。

やがて落ち着いてきた母とともに、蓮花は父の墓へと案内された。墓石の前で、蓮花は静かに手を合わせ、父への想いを心の中で語りかけた。

「お父さん、私がもっと早くに力を使えるようになっていれば良かったのに。本当にごめんなさい。謝っても許されることはないから、強くなるよ。そして、みんなを守れるように、この力を使いこなせるように、頑張るから」

胸を締め付けるような悲しみと、ようやく両親の真実を知った安堵が入り混じり、蓮花は静かに涙を流した。