名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

雲覇の移動雲のおかげで、大人数だったが、久惔が朱雀の姿にならなくともたどり着いた。

「私たち2人はこの場を離れます。みなさんで協力しつつ生活してください。皆さんのように生き延びている人が他にもいるかもしれないので、探してきます」

そう伝えて、久惔とともに森を抜ける。生き残っている人はいないだろうということは、蓮花自身もわかっている。だけど、一縷の望みがあるのならば確かめなければならない。助けを待つ人がどこかにいるかもしれないという希望を胸に。

北から南まで、久惔の背に乗せてもらって探し回り、蓮花の青い炎で焦土に緑を蘇らせた。しかし、結果として緑が戻っただけで、生きている人っ子一人いなかった。そして驚いたことに、界理の御告げによって降り注いだ天墜の礫岩は、この国の地形そのものを変えてしまっていた。

北国のさらに北端、他国と隣接していたはずの土地は、まるで鋭利な刃物で切り取られたかのように、姿を変え、隣国に接する陸地は一切なくなっていた。かつては広大だった霜峰国や風霞国を併せ持った霜霞国は、さらに南下するにつれ、元の地図からは想像もつかないほど、細く長く引き延ばされたような細く長い弓のような形をした土地となっていた。天墜の礫岩は、大地を深くえぐり、幾重にも入り組んだ湾や、険しい山脈を創り上げていた。