名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

恵まれた環境で育てることはできないが、不自由がないように、この子供を精一杯育てようと、澄紗は覚悟を決めた。

夕方、帰ってきた夫も、澄紗の話を理解して、了承してくれた。夫婦は、この小さな命を、自分たちの子供として、大切に育てることを誓った。

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「と、まぁ以上だ。あと、蓮花が親と思っている育ての親は生きて、虎牙島に身を寄せている。本当は蓮花も虎牙島、もしくは燈緋島だったんだ。だけど、2人は蓮花のことを覚えていない。もちろん、お互いのことさえも。これ以上苦しいことは他にないだろう?燈緋島は他に島人もいない。ひとりぼっちは俺がさせたくなかった。残ったのは凍泉島と翠嶺島だが、凍泉島は北国の者でなければ生活できないと踏んで、翠嶺島に送った」

久惔は、淡々と、蓮花がこの島に送られた経緯を話した。

「私のことを慮ってくれた結果なんだよね。大丈夫だよ、ありがとう、久惔。両親が虎牙島にいることも分かったんだから、私のやることは決まってるよ」

蓮花は、久惔に頼んで連れてきてもらった場所。それは、霜霞国の王城だった。この惨劇の原因となった王族たちと、直接向き合うために、この場所へ向かうことを選んだのだ。

王城の門は、焼け焦げ、半壊していた。王城自体も、なんとか城の原型を保てている程度で、いつ倒壊してもおかしくないような有様だった。