名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー


そんなとき、島人とつながる機会を設けてくださって、島人全員の集合絵を描けたので、理由をつけて持ち帰り、送ったのです。そして、皇女さまがやってきて、サクという女性を連れ去っていったのです。駆け付けたあなたと、もう一人に捕らわれ、今までの間、この部屋にいました」

話し終えた絵描きの男性は、糸が切れたかのように、ベッドに倒れ込んだ。

蓮花が駆け寄ろうとすると、碧嶺は手で制止した。

「気絶しているだけだ。部屋を出よう」

碧嶺は蓮花の手を取り、先に部屋を出た久惔のもとへ向かった。

「久惔」

「ああ、わかった。蓮花、予定変更だ。碧嶺が言うくらいだから、力のことはこの目で確認せずとも信じることにする。早急に霜霞国へ向かうぞ」

「蓮花は、いつぞやの雲覇の移動雲を使うといい。僕は島人たちの混乱を鎮めねばならない。頼んだからな、久惔」

妖神の2人だけで交わされる会話に、蓮花は置いてけぼりを食らう。碧嶺と別れ、久惔についていくと、空に浮かんでいる雲のような白い塊が宙に浮いており、迷わずそれに乗る。

天閣から出ると、久惔は腕から生えている鳥の翼のようなものを羽ばたかせたかと思うと、赤というか橙というか、朱色に近い炎を全身にまとった鳥に変身した。