名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

捨てられてしまうのではないか。その恐ろしい予感が、心の奥底で燃え上がる。

実際に、桔梗には2人の兄弟と2人の姉妹がいた。桔梗も含め5人。桔梗は真ん中っ子だった。しかし、気付けば、その人数は一人、また一人と、まるで風に舞う木の葉のように減っていく。日々の生活の中で、他の4人と話すことはほとんど、いや、全くなかった。食事の時でさえ顔を合わせることはなかった。

いつの日か、その異様な状況が気になって、母親に尋ねてみたことがある。

「他の4人はどこにいるの?」

答えはいたってシンプルだった。
尚且つ、その声には、一切の感情が宿っていなかった。

「イラナイ子は捨てたのよ。残ったのは貴女だけだったようだけど」

その言葉が持つ、氷のような冷たさに、幼い桔梗は身震いした。当時、南国──羽耀国との決着はまだついていなかった。母親は話を続ける。

「あの子たちは、役に立たない、つまらない、イラナイ存在だったの。だから、あの国へ送り込んでやったわ。どうせ役に立たない命なら、国のために散らせばいいと思ってね」

母親の口から語られる、娘や息子に対する容赦のない扱いに、桔梗は恐怖した。皆、羽耀国へと送り込まれ、そこで命を散らしたのだという。