凛音は、困惑したように話してくれた。なぜこのようなことが起きたのか、蓮花にはわからなかったが、凛音が過去をすべて思い出したことだけは理解できた。
「凛音さん、なぜ思い出せたのか伺ってもいいでしょうか?」
「えーっと。今にして思えば、霧がかかったように昔の記憶は霞んでいたの。靄に覆われていて、真っ白なかんじ。私は島出身で、昔から島で生きていたと思っていたのだから、過去なんて気づきもしなかった。あの絵描きの男性にしつこく過去を聞かれるまで、疑問にすら感じなかったの。だけど突然、ついさっきね、思い出したの。何もかもすべて」
凛音は、そう言って、優しく微笑んだ。
「教えてくださってありがとうございます」
蓮花は、その言葉に、感謝を伝えた。
「いいのよ。それより、蓮花ちゃん、なにかあったの?急いで私の部屋に来てたでしょう?」
「そうでした!私、しばらく翠嶺島を離れるので、ご挨拶にと伺った次第です」
「そうなの。寂しくなるわね。怪我には気を付けて、行って帰ってくるのよ」
「はい、心配をかけないように努めます」
蓮音は、凛音と想来に深く頭を下げると、部屋を後にして、碧嶺の自室へ急いだ。
「蓮花です。戻りました」
扉を開けると、そこには、碧嶺と久惔がいた。
「蓮花、早いな。もう挨拶は済んだのか?」
久惔がそう尋ねる。



