名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー



「ちょっと待ってよ。私は羽耀国のことなんて知らないよ?母さんから教えてもらったこと以外は。それに、私の両親は、少なくとも羽耀国の人ではないはずよ。だって、霜峰国の出身だって聞いたことがあるもの」

「そうか、そこから話さないといけないのか。澄紗は約束を守り通したんだな」

久惔は、一人で納得していた。蓮花だけが、置いてけぼりをくらっている。突然、自身の母親の名が久惔から出てきて、蓮花は、久惔への疑問が募っていく。

「蓮花、焦る必要はないよ。久惔が全て教えてくれるはずさ」

「そうだろう?」と、碧嶺に圧力をかけられた久惔は、もちろんだ、と頷いた。

「そのためには、ひとまず、俺が蓮花の力を確認しないとならねぇ。ってことでだ。碧嶺、蓮花のこと、借りてくぜ」

「ああ、分かった。危険な目には合わせないように。何かあろうものなら……」

碧嶺は、久惔に釘を刺した。

「はいはい。分かってるって。俺をなんだと思っているのやら。傷一つ、つかないようにしとくってことで大丈夫かよ?」

「ああ。雲覇に頼んで、移動手段の確保をしておく。」

「今すぐにするか、少し時間を置くか、どちらがいい?」

久惔は、碧嶺と蓮花自身に問いかける。

「時間を取ったほうがいいだろう」

「すぐに行かせてください!」