名前を奪われた少女は、妖神と共に誓いを抱いて歩む。ー名喪ノ帳帖ー

蓮花を見ただけで、なにやら感じ取ったのか、ものすごい大股でずんずんと蓮花に近寄ってきた。その足音は、まるで地を揺らすかのようだ。

「おい、おい。碧嶺に呼ばれてきてみれば、蓮花。もしかして、ついに使えるようになったのか?朱羽の燈の力を」

なんのことだか分からず、蓮花は首を傾げることしかできない。碧嶺は、その言葉だけで理解できたのか、「まさか……!」と、驚きを隠せないようだった。

久惔に続いて場所を移した先は、碧嶺の自室だった。

「碧嶺は察しがついていると思うが、蓮花は俺の加護を受けている。羽耀国は他の3国と違い、王族は代々妖神を信じ続けていた。というのも、慣わしの一つに、3歳から5歳までの間、子供を妖神に預け、育ててもらうという風習があったからだ。妖神を信じていたからこそ、界理の御告げの資料も、もしかすると、可能性の域は出ないがあっただろう。と、まぁ、つまりだ。蓮花は、南国の王族の血が流れているわけだ。本名も下の名は蓮花だが、渓科ではなく、羽守 蓮花。」

久惔は、そう蓮花に告げた。だが、蓮花は、その言葉の意味を理解できなかったが、自身の本当の名と言われたものを繰り返し口に出して見るもしっくりこない。